年をとっても尊厳を保ちながら暮らし続けるために

厚生労働省では「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築」の実現をめざし、自治体による取り組みをすすめています。

→出典:厚生労働省「介護予防」

ますます増大する医療費、介護費により自治体・個人ともに財政が逼迫するなかで、費用対効果の高い取り組み方として、音読療法があります。

音読療法による介護予防ワーク

音読療法での介護予防は、呼吸法、発声、音読エチュードの3つのプロセスを通じて、QOLの向上に貢献することをめざしています。

まず、立っても座っていてもできる3つの手順にシンプル化した呼吸法を考案、その人なりに無理のないやりかたで、かつ覚えやすいようにしました。

この呼吸法をおこなうことで、呼吸筋群や姿勢筋群をストレッチすることができ、安定した呼吸や姿勢、歩行など基本的な体力を養うことができます。

また、呼吸は、ふつうなら自分で勝手にコントロールできないはずの自律神経に直接働きかけることができる行為です。ゆったりとした呼吸により、副交感神経を優位にし、メンタルケアに効果を発揮します。

基本の呼吸法を受けて、発声、そしてさまざまな効果を導き出す工夫をした音読エチュードを皆でおこないます。無理なく身体を動かし表現をすることで気持ちも明るくなり、楽しく終わることができます。

呼吸法の強度やテキストの種類、エチュードの内容を変えていくことで、参加者の体力や介護レベル等に容易にあわせることができる点もほかにはない特色といえるでしょう。

音読療法を地域包括ケアシステムの一環に

実施するのに特別な道具を必要とせず、会議室やロビーや公園など場所を問わず、経費をかけずに実現できるのが、音読療法の特長です。

手順が確立しているため、音読トレーナーの育成も比較的容易です。音読トレーナー育成を同時進行することで、まだ介護を必要としない中高年層の退職後の職業・余暇活用・ボランティア活動に、またいきがい作りにも役立てることができます。

費用対効果抜群で、地域のコミュニティ形成にも活用できる音読療法を、地域の介護予防のためにご活用ください。


 音読療法協会の「いきいき音読ケア」活動

音読療法協会では2011年以降、複数の老人介護施設および被災地の仮設住宅集会所等で介護予防ワーク「いきいき音読ケア」を実施してきました。

老人介護施設では、月1回ながら長期間(最長2年半以上)継続することで入所者の状況改善のサポートとなった可能性を見ることができています。初期よりも1年以上経過した時点のほうが会話や表情に生気が出てきたケースも複数目撃されています。

また被災地(岩手県、宮城県)では、各所1〜2回の実施ながらメンタルケアに大いに効果があったとの感想を多数いただきました。


参考: 厚生労働省「介護予防の理念」

  • 介護予防は、高齢者が要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止を目的として行うものである。
  • 生活機能の低下した高齢者に対しては、リハビリテーションの理念を踏まえて、「心身機能」「活動」「参加」 のそれぞれの要素にバランスよく働きかけることが重要であり、単に高齢者の運動機能や栄養状態といった心身機能の改善だけを目指すものではなく、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を促し、それによって一人ひとりの生きがいや自己実現のための取組を支援して、QOLの向上を目指すものである。
厚生労働省・これからの介護予防
厚生労働省「これからの介護予防」より

 参考記事:介護予防に適した音読療法ワーク